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 まだ…
九条達が甲賀に追いついた時、全身寒気と言うものが走った。
甲賀の今までに見た事のない顔に。
近くに倒れている颯樹。
それを横目に九条は、ゆっくりと口を開いた。

「瞬。」

無言のまま、ゆっくりと振り返った甲賀には、表情がなかった。
いつも悪ふざけばかりしている甲賀。
そんな甲賀からは想像もつかない。

「甲賀さん、大丈夫か?」

大助がおそるおそる問いてみる。
甲賀は不敵に口もとに笑みを浮かべた。

「まだ…殺して欲しい人いる?」

完全に我を忘れている。
九条は、颯樹と甲賀を見つめ大体の状況は把握した。
颯樹が気絶した事に、おそらく甲賀が切れたのだ。
甲賀の中で「大事」と認定された者が、たとえ些細な傷を作ったとしても
それがより他人によって与えられた物だったとしたら
甲賀は我を忘れる。
刀を鞘に収めた九条は、颯樹の元へと近づいた。

フワリ…。

九条の髪が風に踊る。
颯樹の傍に膝を折り、抱き抱えようとした時だった。
自分のクビもとにある、切っ先をチラリと見つめて、刀を当てている甲賀の事を
見上げた。

「どう言うつもりだ、瞬。」
「颯樹チャンに汚い手で触らないでくれます?九条さん。」



※こちら記載されております内容は、全てフィクションです。




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